「TRANSCENDENCE(超越)」では、写真の多様な言語を探求し、写真表現を肯定とレジリエンスへと昇華する 6 人の日本人女性写真家、細倉真弓、岩根愛、岡部桃、鈴木麻弓、殿村任香、𠮷田多麻希の作品を展示する。
本展は、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭第10回を記念し、ルシール・レイボーズ、仲西祐介、ポリーヌ・ベルマールの企画により2020年に開催された「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」展にインスパイアされ、同展に参加した写真家の数名の作品に焦点を当てている。彼女たちの作品に内在する親密性や集団社会における体験は、現代の日本社会の複雑性やその先にあるものを私たちに投げかけている。
細倉真弓は「Walking, Diving」で、サイアノタイプの技法を用いて、視覚という極めて個人的な体験を地図にした。岩根愛は、パンデミックに制作した「A NEW RIVER」で、桜と歴史的要素を重ね合わせた。鈴木麻弓は「豊穣」で、自分自身のヌードやいびつな形の野菜のポートレート、ソノグラム(超音波写真)を用いて、不妊治療の経験を詩的に喚起している。岡部桃は「Bible」および「ILMATAR」のシリーズで、独創的な色遣いでジェンダー・イシューを親密かつありありと描写し、超越した表現へと昇華した。殿村任香の「魂トリップ soul trip」は、通過儀礼とも言える韓国での旅を通じ、祖父母が結ばれた愛をたどることで、社会における憎しみの境界を越えていく。𠮷田多麻希は「Negative Ecology」で、洗剤などの家庭用化学薬品を混ぜ動物や自然が写された写真を現像することで、私たちの日常が生態系に及ぼす影響を幻想的な視覚表現とともに問いかける。
日本で制作された6名の作品は、KYOTOGRAPHIEが第1回からタッグを組んでいる小西啓睦のデザインによる洗練されたセノグラフィーにより展示される。「TRANSCENDENCE(超越)」は、いわゆるグループ展ではなく、6人の写真家それぞれに光を当てる万華鏡のような展覧会として開催された。写真の力を通して、ヴァルネラビリティ(脆弱性)、多様性の美しさ、そして自分の物語や歴史をあらたに作っていく勇気を持つ女性たちの不屈の精神を讃えているのだ。